月の娘と森の娘~絵本~
「月の娘と森の娘」
昔 世界は空によって 二つに分けられていました
月の世界と 森の世界です
ある日のこと 月の娘は お母さんの大切なペンダントを
森に落としてしまいました。
それを見つけたのは 森の娘でした。
キラキラと輝くその星に驚いて 森の娘は思わず 空を仰ぎ見ました。
森の娘は言いました。
「きっと あの空の向こうには 素晴らしい世界があるに 違いない」
その頃 月の娘も同じように 森の世界を気にかけていました。月の娘は言いました。
「お母さんのペンダントはどこ?探しに行かなければならないわ」
こうして 月の娘と森の娘は 来る日も来る日も 空を見続けました。
そして ついに二人は 空を司る女神であるクマリア様に お願いをしました。
月の娘は祈ります。
「クマリア様。私はどうしても 空の向こうへ行って お母さんのペンダントを 見つけたいのです」
森の娘も祈ります。
「クマリア様。私はどうしても 空の向こうへ行って この星を落とした人に届けたいのです」
クマリア様は言いました。
「いけません。二つの世界は 断絶されているのです。それを越えようとするのは傲慢 大きな罪ですよ」
なおも二人は祈ります。
「それでも私は 空の向こうへ 行きたいのです」
やむなく クマリア様は こう答えました。
「ひとつだけ 願いを叶える方法があります。
空の真ん中に 友達の扉と呼ばれる場所があります。
もし あなたのスキが本物なら その扉の向こうに 友達が待っています。その娘に 約束のキスを与えなさい。そうすれば 願いは叶うでしょう」
クマリア様は 娘たちに問いました。
「あなたのスキは 本物?」
クマリア様は 娘たちのために
世界を結ぶ 梯子を掛けてやりました。
そして とうとう二人が 空の真ん中にやって来た時
そこには 一枚の大きな鏡が 壁のように立ちはだかっていました。鏡には 自分自身の姿が 映っています。
クマリア様の声がしました。
「さぁ その扉の向こうに あなたの友達が待っています。鏡に映る己が身を 千に砕き 万に引き裂けば 彼女に約束のキスを 与えられるでしょう」
「ただし あなたは命を失うかも知れません」
「最後に もう一度問います。あなたのスキは 本物?」
二人は 鏡に映る 自分の姿を見つめます。
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とても素敵なお話です。続きがとっても気になります。このお話は、この物語の本質に、かなり迫った物だと思います。
絵本に描かれた「月の娘」は紅羽。「森の娘」は銀子。澪愛からの二人への贈り物。と言った感じかもしれません。
この絵本は未完です。完成する前に、澪愛は熊に殺されたから。と紅羽は言っています。
この絵本を書き出した時期が不明ではありますが、もしかしたら、銀子と紅羽が何らかの理由で会えなくなり、寂しがる紅羽の為に書いてあげたものなのかな?と思います。
2話で、声だけの回想ではありますが、澪愛は幼少時の紅羽にこう言っています。
「紅羽。今日もお友達と仲良くできた?どうしたの?元気ないわね。悲しい顔しないで。紅羽はあの子の事が大好きなのよね。大丈夫。きっとまたあの子に会えるから。紅羽が本当に会いたいと、強く願うなら」
澪愛一人の台詞ですが、本来ならここに、紅羽の台詞もあるんだと思います。紅羽と銀子が会えなくなった理由を、紅羽が語っているか泣いているのか、どちらかだと思います。だから、悲しい顔になっていた。元気がなかった。なので、スキを諦めず、会いたいと強く願えば会えるんだよ。と言う事を、絵本を通して紅羽に伝えたかったのかもしれません。
絵本で興味深いのは、鏡の存在と星のペンダント,それと友達の扉です。
鏡は反転世界。面白いなぁと思ったのは、月・森の娘両方とも、空があるのに、森の娘はそらを「見上げる」 月の娘は空を「見下ろす」格好で描かれています。私達の概念だと、そらは上にあるものですが、月の娘からみたら、空は見下ろすものなんだなぁ。というのが印象的でした。
鏡の世界はなぜ反転しているのか。実は反転しているのではなく、見ている人の問題。というのをどこかで読んだ記憶があります。鏡の裏側に回ると、反転はしていない。というような感じの事。ここでは、あまり関係なさそうなので、素直に鏡に映る自分。として受け止めたほうがよさそうではあります。
何故澪愛は、大きな鏡の壁を描いたのか。そしてそれを壊さなければ、会えないと書いたのか。千に…万に…鏡に映る己が身を裂いて…と。絵本としては少々過激な表現で、命を落とすかもしれませんよ。と書いたのか。月の娘には銃を。森の娘は爪を。
ギリシャ神話で、ナルキッソスのお話があります。エコーという妖精の悲恋物語と続いているお話なのですが、女神に呪いを掛けられたナルキッソスは、湖に映る自分自身に恋をしてしまいます。ですが、その恋は実るはずもなく。恋した相手は、何も語ってくれませんし、触る事もできません。ある日、思い余ったナルキッソスは、湖に映る恋しい相手にキスをしようとして、湖の中に命もろとも落ちてしまいました(恋するあまりにやつれて、やせ細り死んだという説やそのほかにも諸説あります)
ここで言う湖は、鏡です。そしてナルキッソスは、恋しても実る訳もない相手に恋しています。そこに、何の実りもありません。見返りもありません。何よりも、相手に自分自身が「必要」とされていないのです。スキの共有ができていない。空想の中で、色々思うばかり。こうだったらいいのに。ああだったらいいのにと。自己愛の究極の形かもしれませんが結局、自分自身しか見てはいないのです。
だから、約束のキスを与えることも、受け取ることもできない。その鏡を破らないと。ナルキッソスのように虚構のスキでは、キスは出来ませんし、命を落としてしまう。だからこそ、スキは本物?本当にすきなの?と問いかけているのかもと、思いました。が…もし、銀子と紅羽の事だとするならば、種族の違いや、お互いの社会ルールを鏡に例えて、それを破る覚悟はあるのか?と問いかけているようにも思えます。
お互いの群れの掟・ルールを破る訳ですから、はっきり言って命がけです。ましてや種族の違いも乗り越えなければいけません。やはり最後の爪と銃は、お互いが属している社会のルールを現した物の様な気がします。
熊は人を食べる生き物。人は熊を排除する生き物。通常であれば、相容れられる関係ではないのです。
それを打ち破るのは傲慢。大きな罪。自分の欲求だけで、他のヒトの事は関係ない。自己の満足のために掟破りをすれば、どうなるのか。とも理解できますが、人間の心理として考えると、人間関係を構築していくことに、様々なエゴ・傲慢は誰しも少なからずあると思います。その傲慢を指しているのか、自分の気持ちばかりを前に押し出す傲慢さを指しているのか…。
またまた余談ですが、獣というものは「記憶」を持たない生き物らしいです。過去に起きたことは、基本的には綺麗に忘れる。というより、覚えてるという必要が無い。らしいです。真偽の程はわかりませんが、まさに3話で言っていた蜜子の台詞そのものだなぁと思いました。彼女は獣だったのですから、自らの本能ですごしていただけ。クマのルールの上では、悪クマでもユリダークでもなんでもないのです。寧ろ正しいのです。ヒトが勝手に透明な嵐を作り、排除の儀で餌を選び、与えてくれているのです。群れていないので、襲いやすく食べやすい。これ以上の事はないでしょう。スキを諦めない頑固な心を持った娘は、より美味しい。スキを包括しているから?このあたりは、把握しきれてないですが…。クマ世界においては、銀子やるるの方が異端なのかもしれません。蜜子とこのみがなぜ壁を越えたのか?という謎は残りますが。
星のペンダントも、意味深です。森の娘は「ペンダント」と言う認識がなく、星が落ちてきた!と思っています。ペンダントを見たことがないのか、そういうものを知らないのか。輝く星。と思う辺りとても可愛らしいなぁと。
そういえば、紅羽の苗字にも「輝」が入ってますね。
月の娘が、お母さんの星のペンダントを…と言っている辺り、澪愛の星のペンダントの事だと思います。この星のペンダントは、必ずこの先の鍵になってくると思います。銀子はいつ、このペンダントを手にしたのか。ポイントはココです。澪愛が殺された時なのか、そうでないのか。
今の所、提示されているもので考えると、紅羽と初めて会った時は、銀子はペンダントをしてません。紅羽・銀子・澪愛と写真を撮った時も、澪愛がペンダントをしています。その後、絵本を書いたとしたら、その時点ではもう、銀子と紅羽は、会えない状態になってしまっていた。と考えたほうがいいのかな?と思います。だとすると、ペンダントはこの時点で、もしかしたら銀子に渡っていたのかも?と推測もできます。だから、星のペンダントを落とした。と絵本に書いたのかな?と。
ペンダントを渡したのは、澪愛なのか、紅羽なのか。
4話で銀子はるるに、こういっています。
「私は平気。あの子にスキを貰ったから。それを返しに行く。会って私のスキを届ける。約束したんだ。会ってもう一度キスをするって。そう、約束のキス。きっと私を待ってる」
銀子の言うスキは「星のペンダント」なのでしょうか。だから、スキを返すと同時に、スキを届けるという形になるのでしょうか。
某ブログ様で、クマリア様=ジャッジメンズのライフ・セクシーでは?というのを拝見しました。確かに「あなたのスキは本物?」という台詞もかぶりますし、色々と被る台詞があります。「傲慢・大きな罪」このあたりも、ライフセクシーから、断絶のコートで銀子は言われています。
ですが、この絵本の作者は澪愛です。クマリア様もそうですが、何故澪愛が熊側の概念だと思われるものを知っているのか?というのが、とても大きな謎です。ライフセクシーの台詞は、私達が見ている時間軸で言えばですが、澪愛のほうが、先に絵本に書いています。この先、ジャッジメンズの謎も解き明かされるとは思います。もしかすると澪愛よりも先に、あなたのスキは本物?と、誰かに問い聞いているかもしれませんが…兎にも角にも、澪愛とライフクール(ジャッジメンズ)が、同じ台詞を書いて言っているのは、どういうことなのか。
1、澪愛も熊だから知っている。
2、銀子から聞いた(ただし、銀子・紅羽・澪愛と一緒に居る頃、銀子が人間の
女の子に化けれないと、会話が出来ない?)
3、他の人熊に聞いた
4、たまたま偶然に一致した
4は無いはずです。
1だった場合、あなたのスキは本物?という台詞をライフクールが度々言っていますので、もしかすると、澪愛=ライフクール?となるかもですが、かなり疑問です。そうでないにしろ、澪愛が熊という根拠が少し弱いかな?と言う気がしないでもありません。
3なのですが。もしこれだった場合、どの熊から聞いたのか?という部分で大きく疑問がでます。今の所、登場人物にあてはめると、ユリーカしか居なさそうです。が…。ジャッジメンズも、熊であり人間でありという存在です。一応ですが…。あり得なさそうですが、もし、ジャッジメンズの誰かが、紅羽の父親だとしたら、スキは本物?だとか、クマリア様あたりの存在も、きっと聞いてると思います。ですがそうとは思えないのですし、なんだそれは?!ってなりそうですので…一応こういう事も妄想できるよね。程度のレベルでしかないです><
一番ありそうなのは、2なのですが、小熊状態だった銀子がヒトの言葉を話せるのか?と言う1点に尽きると思います。初めて紅羽と会った時に、紅羽は銀子に話しかけてますが、銀子が理解していたのか。銀子もクマリア様…と呟きますが、果たしてそれは人の言葉なのか。
クマのスキとヒトのスキ。価値観も違えば、生態系も違う。この辺りの壁は、どうなっていくんだろう?そもそも、クマって何?熊だよね?という、結局1話を初めて観た時、抱いた疑問…振り出しに戻ります。
ここは、一番回収してほしい謎です。
クマリア様が友達の扉と言った時の絵は「百合の花」でした。なんらかのメタファーなのか、それとも単に百合にしただけなのか。
手の中に百合の花が現れて、星屑になり流れていきます。森の娘と月の娘を結ぶかの様に。
クマリア星の大爆発。クマリア流星群。このあたりを彷彿とさせます。もしかすると、この謎も澪愛は知っているのかもしれません。
すんなり考えると、クマリア様=澪愛という構図がしっくりくるのかも?ですが。
断絶の壁が出来た時期と、澪愛が殺された時期。銀子がペンダントを手に入れた時期。本筋の鍵はどうやら、澪愛が握っているように思います。
一番つかめないキャラクターは、ユリーカです。澪愛と親友だったと公式にはあるのですが…。私の過去日記を読んでも、ユリーカについて二転三転してしまっていて、物凄い迷走ぶりに爆笑してしまいます><
骨が折れそう…と思っていましたが、迷走を少しでも本筋に戻すためにも、時系列をキチンと書き出したほうがよさそうです…。
銀子の過去の大きな罪は、断絶の壁を越えて紅羽と会っていたことでしょうか?ヒトを食べずに仲良くしていたことでしょうか?熊はヒトを食べるもの。食べるものなのです。やっぱり、1話2話あたりに、大きなヒントがごろごろ落ちている気がしてなりません…。ただ、今の時点で見たところで、それがヒントだった!とは気づけそうにありませんが。